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父親死にました③(病院出発~葬儀場決定・耳より葬式情報)

 父親の死亡確認を医者が取ったあと、次の一手である。この場合普通にすべきことがよくわからんわけだが、そこは当然看護師さんと医者が慣れていて、こっちがううむと考えている間に指示が飛んだ。

 「今から体をきれいにしてきますから、とりあえず遺体をどこに運ぶかの段取りをお願いします」
 「しばらくは時間があるので、主要な方への連絡をしておいてください」

 僕の父ってのは、この4年間病院に四肢不随で寝転がっておったわけであるが、まあ実父であるわけで、別に生きたきゃ好きなだけ生きてもらって構わんと思ってはいた。と、同時にどう考えてもソフトに死んでいっていることもまた確実であったため、いつ死んでもいいようにと、その準備も進めていた。その一つには、死んだ場合の葬式は、地元の葬式会場と提携している仲介業者に段取りをしてもらうということも事前に連絡していたため、とりあえずはそちらに連絡。
 連絡を取ったところ、ここでいきなりハプニングが起きた。当初、僕が住む本当に地元の葬式会場でお通夜葬式を行う心づもりだったのが、仲介業者の情報によると、寄りによって会場が現在改装中で使用できないのだという。急きょ、隣町の葬儀場から遺体を運ぶ運転手を手配してもらうことに。まったくついてないことが重なるもんである。
 運送の手配と同時進行で、兄、伯母、祖母に連絡。史上最強に面倒くさい連絡事項である。なんせ、ばっちり父が死にたての状況は俺しか見ておらんし、なんていうか「この大迫力さを知らずに結果だけ聞いて感傷的になってくれんなよ」と、なんだか悔しい気持ちで状況について連絡をとりまくった。この時、僕の使用するスマートフォンのポンコツ加減にうんざりする。声の遅れや、電話アプリ自体が落ちるとか、ほんまに考えられへん。近いうち買い替えることを強く決意(今まじで探してる)。
 早朝の病院の受付近くでそれらの電話などしていると、受付から僕の名前を呼ぶ声が。「八木(仮名)さん、あの、こちら診断書です、5400円です」となにやら紙を渡される。死亡診断書だった。何に使うかはまったくわからんが、ものすごく用途が広そうで今後使いまくりそうな書類である。財布には2万円ほど入っていたので、早朝とりあえず財布を持ってきたナイスプレイを心中で褒める。しかし、5400円って、当然入ってない可能性もある金額なので冷や汗掻いた。このタイミングで駐車券もパンチを通してもらい、しっかり無料にしてもらった。

 運送の車は9時に到着するそうな。その間、病院に備えられた地下の霊安室で待機。一生枯れない造花と『霊』とデカデカと書いた掛け軸のかかった祭壇がある窓のない部屋で、いつもお世話になっていた看護師さんが慣れた手順で線香に火をつけて何礼かして席を外した。車が到着するまで大体あと1時間。窓のない地下霊安室に僕と父の遺体、細い煙がゆっくりと動いているという異様な空間だった。父の顔にかかった白い布を外すと、脳梗塞でゆがんだ顔に少しだけ化粧がされ、髪形もボサボサの状態から櫛で梳かれている状態だった。
 『こういうときはこんなこと言うもんなのかな』と考えながら「おつかれさん」と声に出して額を触ってみると、まだ暖かい。が、完全に人でなく物だった。何回か死体は見てるけど、これを人として捉えることは難しいといつも思う。父が死んだ、お通夜だ、葬式だ、今まさにそれらが始まるのだ、ってことで、仕事に行けなくなることも気にはなってたので、霊安室から上司に電話を入れた。

 「今朝父が亡くなりまして、今日明日ちょっと仕事行けなくなりました」

 言葉しながら、『もうこの報告って相手を殴ってるのと同じやなあ』とか考えていた。もう、この先にどんな言葉を出しても不自然な動きになるのだろうが、仕事に行けるテンションではあったから、こちら側の都合で仕事場の流れを乱したことを詫びた。が、相手は当然恐縮したりこちらを気遣ったりする。僕は父の死を武器に人を殴るつもりは全くないが、わりかし通常のテンションに戻りつつあることを落ち着いて報告することすらも、職場を殴っているも同然である。死ぬことは不自由が付きまとうね。「いやー死にましたわ、今霊安室で目の前に死体あるんですけども」と普通のテンションで話した後、相手がどうやら困っていることがわかったのでそれ以上余計なことを言わないようにした。困らせないようにすることすらも困らせてしまう。

 葬儀場運送の車到着、同時に兄も到着。原付で来ていた僕は、配送車を追走する形で、ブッキングした葬儀場へと移動。が、これが非常にさみしい葬儀場で、おそらくは祖母と伯母の納得を得られないと判断。すでに父の死体が葬儀場にある状態から、別の業者の可能性を緊急で探すことになった。正直、僕個人としてはどこでもいいのだが、そういうわけにはいかないのだ。いろいろあって。僕はもう完全に頭が冷えていて、記憶とスマホをフル回転させながら、地元の業者をピックアップして電話をかけまくり、ここで「当初仲介業者から改装中と言われた葬儀場が実は普通に運営している」ということが発覚して、まず僕が原付を飛ばしてその葬儀場で状況と段取り、値段の交渉などをすることに。兄は父のいる葬儀場でいったん待機してもらう。
 移動後、伯母と祖母の納得が得られそうな会場であることを確認したり、仲介業者に「ええ加減なこと言ってんなよボケ」的なクレームを入れたりしつつ、葬儀場を決定した。当初運んだ隣町の葬儀場の社員さんは、「こういうことは納得するまで考えてやったほうがいいんです、気にしないでください」と嫌な顔することはなかった。

 葬儀場が決まり、父の遺体と兄が到着するのを待つ、という段階になって、朝6時半に起きてから初めて手が空いた。時間は12時30分だった。格好は朝起きて一番近くにあったチノパンとロンTの上にウィンドブレーカーを着た状態だった。なんとなくパソコンから引っこ抜いたmp3プレイヤーは、当たり前だけど一度も起動しなかった。祖母と父と兄と伯母が到着するまでの間、喪服を取りに家に帰った。
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 ここで、今身内が死にそうな方に朗報です。「死んだ場所からどのように運ぶか」で死後のコストが決まります。「お通夜と葬式はいらない」という場合には、葬儀社に連絡して、即日地元の火葬場のブッキングと運送の手配をすれば、事後処理にかかる手間は運送費、火葬代のみの、数万円以内で済みます。とにかく安く済ませたい人は、運んでくれる業者と、その業者に火葬場のブッキング、という手順をお勧めします。住む場所によりますが、通常は葬祭費が自治体から数万円出ますので、実質2万くらいでいけるのでは。僕の地元は、葬祭費は喪主への銀行振り込みでした。死後の事務手続きは手間賃払って葬儀業者に聞けばわかりやすいですよ。
 もう一つ、葬式をやる場合は、葬儀場は下見に行っておいてください。今生きている人間に言い訳するためのものなので、自分なり、親なり兄弟なり子供なりを黙らせるために材料を持っていないといかんのです。「生きてるうちにそんなこと考えるなんて」っていう考えがもう死の不自由さに毒されてる。うっかり道端で死ねないんだったら、スケジュールと金の管理は当然やるしかないことなのですよ。葬儀の見積もりも具体的にこっそりやっておいて、いざって時に「こんな感じ」と書面で関係者に見せられたら話も早くなると思います。

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