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母親から2万の財布をもらって心を蝕まれたの話

 「俺を膣から取り出した」でおなじみの女がいる(母)。

 息子がバリバリ30を超えて「超仕事行きたくねえ、人生長すぎて吐く、死にてえ」とブログやツイッターでのたまっているとはまさか思わんだろうが、僕が不登校になった現場にも一応その女が近くで見ていたりしたので、息子の社会に対する適性については薄々感づいているだろうか。よくまあめげずに俺を育ててきたもんである。
 僕は中流家庭に育ったわけだが、僕の母親の母親、つまり「俺の母親を膣から取り出した」で絶賛売り出し中の女(祖母)は、医者の嫁であり土地持ちであるために、わりかし苦労なく育ってきている。

 ところで去年の10月あたり、「俺の母親をこっぴどく抱いた」というキャッチコピーでこの世を闊歩していた男(父)が完全に死んだ。死ぬ4年前から、僕は敗戦処理のようなことに駆り出されることがしばしばあったのだが、母親としては離婚していたために、息子が元旦那のことでバタバタとしているのが申し訳ないんだかどうだか、いろいろ思うところがあったらしい。
 父親敗戦処理の作業が、この4月にやっとこさ蹴りがついたので、「記念に買ってきた」と、母から僕にプレゼントをくれた。これを書くのはなかなか勇気がいるのだが、正直プレゼントをされるということ自体全然必要のない行為だと思ってるので、何をもらってもそれほど興味が持てなかった。プレゼントってのは、『喜ばないと』という義務感と実際の喜びとのギャップが生まれすぎないようにすることや、社会性が一瞬で描く演技プランを瞬間的に調整する作業を必要とする(まあそれが人間として自然な姿なわけだしな)。友人や恋人なら「パチン」とスイッチが入るもんではあるが、身内、それも母親となると照れやそれまでの関係性も加わって、演技プランもかなり抑えめなものにならざるをえないし、それだって『悪いな』という気持ちが生まれたり、相当面倒くさい。『母親からのプレゼント』ってのはまあそういうものなのだ。

 渡されて中身を確認すると、ポール・スミスの財布だった。
 ポール・スミスってブランドがどこに出しても恥ずかしくないブランドだってのはわかる。素直に、大げさでもなく感想を言い、「ありがとう、使うわ」とトーン低めにお礼を言った。お礼を言えるようになったというのは自分の年齢を感じる。まあ、実際に今使ってる財布の使用はやめて、これに変えるつもりだったし。
 家に帰って、まったく別件でショッピングサイトをうろうろしている時に、偶然ポールスミスの鞄を見る機会があり、少し魔がさして母親のくれた財布がいくらのものだったのかを確認してみた。すると、ポール・スミスの二つ折りの財布は大体20000円弱で、15000円を切るものが存在しないことがすぐわかって僕はすぐにページを閉じた。どういう気持ちだったかというと、「悪いことした」という罪悪感の塊だった。次に、「どうして悪いと思わなきゃならんのか」という怒りに近い気持ちもあった。
 ざわついた心について考えながら、焦って財布の中身を新しいポール・スミスの財布に入れ替えた。新しい財布なので革が固く、クレジットカードは入れるのも出すのも少し苦労した。

 まあ僕がこの世でスーハー呼吸するだけでさ、どっかの誰かに2万円くらい損させてるのだとは思うが、イメージできないところに金を使ってもらってることよりも、俺の財布に2万円誰かの金を使わせるのは、とりあえず超勿体ないと感じてしまうのです。別に、母親だからってわけでもなくて、誰からもらってもそうだと思う。正直、嫌な気持ちのほうが強かった。『自分に使ったりしろよ』と思った。どう書けばいいのだろうな、この気持ち。
 俺がさほど必要としていないところに、2万円使わせているという重圧がよくわからんのですよ。贈り物されなれてないとつくづく思う。俺が2万の財布持ったところで、この世に何の影響もないぜ。だって俺は、自分の財布がどこのブランドとか意識して生きたことなんかなかったんやからさ。お金は意味のある使い方をしてほしいと思った。俺の財布に使われる2万って、意味がなさすぎる。でも、2万の財布を渡されたら今後使わなきゃだめだし、『もらった瞬間は、義務だろうが母親だろうが、もっと大げさに喜ぶべきだったのか?2万使った甲斐がなかったのでは?』とその時の自分のあるべき姿について考えた。この作業も鬱陶しかった。

 感覚の違いで、大したことではないのか。
 なんで「使わせた」という罪悪感をこんだけ感じるのだろうか。もはや嬉しさはない。
 これを考えること、言うことってのはアリなのかナシなのかもわからん。

 俺なんかね、午後の紅茶ストレート2本とかおごってくれたらすごいうれしい。そのくらいで別にいいのです。2000円くらいの奢りは心も痛まなくて素直に喜べる。実感もないしな。まだ整理できてないけど、とりあえず2万は多分、自分にとって「明らかに痛みのある金額」なんだろな。

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